第9回目の音楽フェス『登竜門』が開催! 異種格闘技を思わせる9組が集結した一夜をレポート

2024年5月11日、音楽イベント制作団体のArk Relationが主催する音楽フェス『登竜門』(@0711wDream)が開催された。第9回目となる今回は、まるで異種格闘技を思わせるジャンルレスな9組がライブハウス『渋谷SPACE ODD』(@space_odd)に集結。約5時間にわたり繰り広げられた、『アーティストの原石』たちによる熱い戦いの様子をレポートする。

トッパーを務めたのは、2人編成のポジティブ系ポップエレクトロックユニット『CiTLiNe(シトリン)』。初っ端から紫音(Vo.)がパワフルな歌声を投下し、観客のボルテージを上昇させる。自己紹介の一幕ではtsune(Gt.)がギターを大胆にかき鳴らし、紫音と同等の存在感を示していた。『CiTLiNe』の魅力は、突き抜けるヴォーカルやエッジーなギター、エレクトロ・サウンドの3つが重なり生まれる、『圧倒的なパワフルさ』なのだろう。そうした音楽性は、少年向けバトル系漫画のストーリーとの親和性も感じられる。彼女たちの楽曲がアニメ作品のオープニング・テーマを飾る日は、そう遠くはなさそうだ。

トッパーからのバトンが誓也に渡ると、流れてきたのは聞き覚えのある楽曲。そう、秋山黄色の『モノローグ』だった。彼の髪が金色に染まっていたのは、秋山黄色へのリスペクトだろうか。力強く同曲を歌い上げると、フロアからは拍手が上がった。その後は、サポート2名の力も借りながら、新曲を交えたオリジナルの楽曲を大事に届けていく。甘美な歌声が魅力的で、煌びやかな衣装を纏った姿とのギャップにやられた人が続出したことだろう。

続く3組目には、シンガーソングライターの汐音が登場。1曲目から大きな手拍子で迎えるフロアに、彼もありったけのハイトーン・ヴォイスで応える。サポートに迎えた3名のバンドメンバーの演奏も強力。シンガーソングライターのステージというより、もはやロックバンドのライブを目撃しているようだった。「名前だけでなく、全部覚えて帰ってください!」とアピールしていたのが印象的。YouTubeの再生回数が2万回を超えているという「エモーショナル」が披露されると、観客のボルテージは最高潮に達していた。

4組目に登場したのは、シンガーソングライターのVision Story。バンド・サウンドが似合うパワフルな歌唱で圧倒した汐音のステージとは打って変わり、純愛を綴ったバラードが印象的だった。曲のテーマは「相手に尽くしたい」と願う気持ちや失恋の辛さなど、さまざまだ。ライブ中、思わず目を光らせたのは「君がいた世界」のステージ。歌詞を自分ごとに置き換えるように聴き入る観客の姿が多く目に映り、Vision Storyというアーティストの真髄を感じた。

Vision Storyからバトンを受け取り、シンガーソングライターの鳥居れながステージに立つ。1曲目は、アコギ1本の弾き語りから始まった。右手でアコギのボディを叩いてリズムとメロディを同時に演奏しながら、エモーショナルかつ優しい歌声をフロアに届ける。楽曲によっては歌声にパワフルさを宿すこともあり、変幻自在に自身の声を操る様子は圧巻そのもの。特筆すべきは、普段の喋りと気持ちを歌に乗せる時の声のギャップだろう。芯の通った歌声に反し、MCで話す時は少したどたどしく人間味があり、親近感を抱く人が続出しそうだ。

6組目には、出場者の中で唯一のインストバンド、VENTOSが登場。1曲目から早々「俺たちの演奏に酔いしれろ!」といわんばかりに披露するインストナンバーに、フロアにいる観客らは皆一斉に肩をゆらす。その後はミラーボールがくるくると旋回するなどの演出も上手く使いつつ、インストバンドならではのグルーヴを生み出していた。MCはほとんど挟まずに、ステージを後にした彼ら。まさに詞(ことば)いらずの『真っ向勝負の演奏』で魅せたステージは、多くの観客の心を掴んだに違いない。

7組目に登場したのは、空中世界。普段はソロだが、この日はピアノをサポートに迎えたステージとなった。1曲目で彼女の優しさがあふれる声で「あなたと出会えてよかった」と歌われた時、フロアにいる多くの観客の頬が緩むのを感じた。まるで語りかけられているように錯覚する、透明感のある声に、思わず聴き入ってしまう。「本日関わってくれた人たち、ありがとうございました!」と感謝を告げた後、「-MIDAIR WORLD-」へ。同曲を通して彼女は「私の夢はこの世界を平和にすること」と歌う。そんな彼女の歌声には、ゆらゆらと揺れる灯火のような『祈り』が込められているようだった。

空中世界からのバトンを受け取った8組目は、シンガーソングライターの神谷友志。ステージに立つやいなや、「盛り上がっていきましょう!」と声を上げ、力強い歌声で真っ直ぐなメッセージを投げかける。「初めて僕を見た人にも何かを残せるように帰ります!」という彼の言葉からは、毎ステージ真剣に臨んでいるのが伝わってきた。自身の歌手生活はただひたむきに進んで来れたものではなかったことや、さまざまなものと折り合いをつけながら歌い続けていることを明かし、「だからこそ届けられる歌がある」とひと言。その想いがたっぷり乗った彼の歌に対し、観客も「最高ー!」などと全力で応えていた。

トリを飾ったのは、シンガーソングライターの福島清香。1曲目から、天性のパワフルな歌声をフロアに投下する。途中、「大きい夢があります」とMC。オリンピックのテーマソングを歌えるような人になりたいと気持ちを明かすと、フロアから温かな声援が送られた。彼女の歌には終始圧倒されっぱなしだったが、「今日来てくれた人が本気で笑顔になってほしい」といい披露した「ライオン」がハイライト。力強いギターのカッティングとともに放たれる福島の情熱的な歌声が、まるでライオンの遠吠えのようにも聞こえたのだ。また後半のMCでは、SNSに活動を発信する中で習得したというモノマネを披露するなど、愛嬌たっぷりな一面も見せた。そうしたSNSでの発信活動などを通じて「どうしたら自分の歌をより多くの人に届けることができるか」という課題と真剣に向き合う姿勢が、胸に刺さった。

閉幕を惜しむ声が続出した、第9回目の『登竜門』。記念すべき第10回目を迎える2025年は、同年4月2日にライブハウス型ホール『KT Zepp Yokohama』にて開催予定とのこと。素晴らしい『アーティストの原石』たちを目撃したい人は、ぜひチェックしてみてほしい。

【イベント情報】
登竜門
開催日:2024年5月11日(土)
開催場所:渋谷 SPACE ODD(https://spaceodd.jp/about/
Webサイト:https://toryumon.studio.site/

【ライター情報】
潮見そら。1998年早生まれ。2021年より主にWEB媒体での執筆活動を開始。音楽フリー・マガジンの編集も経験。現在は企業所属のライターとして勤務する傍ら、speranza!編集員として活動。ギターロックサウンドを好む。

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